横河電機
◆ 横河電機とは?── 計測・制御・情報の総合エンジニアリング企業
横河電機株式会社は、日本を代表する計測・制御機器のリーディングカンパニーです。1915年創業の老舗企業で、東京都武蔵野市に本社を構え、世界60か国以上に展開しています。
もともとは精密機器メーカーとしてスタートしましたが、現在では工場の自動化(FA)やプラントの制御(PA)分野で世界トップクラスの実績を誇り、特に化学・石油・医薬・電力などの大規模プラントの制御システムにおいてグローバルな存在感を持ちます。

◆ 事業領域と主な製品
横河電機は、大きく分けて以下の3つの事業を展開しています。
① 制御事業(インダストリアル・オートメーション&コントロール)
これは横河電機の中核事業で、全売上の7割以上を占めています。
主力製品は:
- DCS(分散制御システム):CENTUM(セントム)シリーズ
- フィールド機器:圧力・流量・温度などを測るトランスミッター、バルブポジショナーなど
- 生産管理システム(MES)
- 運転支援・予知保全AIソリューション(Exaシリーズなど)
これらは製油所、化学プラント、発電所、製薬工場などで用いられ、安全で効率的な運転管理を支えています。
② 計測事業
創業以来のDNAである高精度な計測技術を生かした製品群です。
- オシロスコープ、データロガー、電力計など
- 半導体製造や電池開発、車載電子機器の評価試験などに活用
- 最新ではEV・再生可能エネルギー分野のパワーアナライザにも注力
この分野では、「信号を正確に“見る・測る”技術」において非常に高い評価を得ています。

③ ライフイノベーション事業
近年注力しているのが、医療・ヘルスケア・バイオ関連の領域です。
- バイオ医薬品製造支援システム
- 細胞培養制御技術(iPS細胞、再生医療分野)
- 遠隔診療支援プラットフォームなど
これにより「人々の健康・医療の未来」へ貢献する企業へと進化しつつあります。

◆ 横河電機の強みと技術力
1. 世界トップレベルのDCS技術
1975年、世界に先駆けてDCS(分散制御システム)を実用化。「CENTUM」シリーズは、国内外のプラントで広く使用されています。
2. 高信頼性・長期稼働
「30年動き続ける制御システム」とも言われ、世界中の石油化学・エネルギー業界から厚い信頼を受けています。
3. OTとITの融合
製造現場(OT:Operational
Technology)と情報システム(IT)の統合において、AI・IoT・クラウドと現場制御の融合を進めています。これにより、スマートプラントやサステナブルな生産環境を実現。
4. フィールド機器の品質と互換性
フィールド計器は、**「一度設置したら10年以上使える」**堅牢性で有名。また、独自のデジタル通信規格(FOUNDATION Fieldbusなど)に早期対応し、グローバルで高い競争力を持ちます。

◆ グローバル展開と国内外での存在感
横河電機の売上の約7割は海外。特に:
- 中東(石油・ガスプラント)
- アジア(化学・製薬・電力)
- 北米・欧州(ライフサイエンスやエネルギー転換)
などで、制御システムの主要ベンダーとして高いシェアを維持しています。
さらに、海外現地法人とのジョイントベンチャーやエンジニア派遣を通じて、地域の課題に寄り添ったサービスを提供しています。

◆ 歴史・トリビア的な側面
年 |
出来事 |
1915年 |
測定器メーカー「横河電機製作所」として創業(創業者:横河民輔) |
1920年 |
日本初の電気計測器(電流計・電圧計)を量産化 |
1975年 |
世界初のDCS「CENTUM」シリーズ発売 |
1983年 |
本社を武蔵野市(東京都)に移転 |
2000年代~ |
制御×AI、製薬・医療分野への多角化を加速 |
ちなみに「横河グループ」はかつて「横河ブリッジ」「横河建築設計」など多方面に展開していましたが、現在は電機分野に集中しています。

◆ 企業理念と文化
横河電機は、企業理念として次のような言葉を掲げています:
"Co-innovating
tomorrow"(共に未来を創る)
これは、単に製品を売るのではなく、
- 顧客と共に課題を掘り下げ
- 共に未来を描き
- 持続可能な社会の実現に貢献する
という姿勢を意味します。
また、社員の平均勤続年数も非常に長く、技術者が長く深くキャリアを積める環境が整っています。品質へのこだわり、落ち着いた社風も特徴です。

◆ 最新トピック・取り組み
近年では、以下のようなテーマに注力しています:
- GX(グリーントランスフォーメーション):CO₂削減に貢献するエネルギー最適化
- AIによる異常検知・予兆保全
- デジタルツインを使った遠隔運転支援
- バイオリアクターの自動化制御
つまり、これまでの“ものづくりの司令塔”から、**“持続可能な社会インフラの頭脳”**への進化を続けているのです。

◆ まとめ:100年先を見つめる“静かなる巨人”
横河電機は、目立つ存在ではないかもしれませんが、
- 工場の安定稼働
- エネルギーの安全供給
- 医薬品の安定生産
- 再生医療の制御支援
といった、社会の根幹を支える技術者集団です。
「精密に測る」「安全に制御する」「未来を描く」ことに真摯に取り組む姿勢は、
創業から100年以上変わっていません。
今後も“人類の安心・安全・持続可能性”を支える、縁の下の知性企業として、世界で重要な役割を果たし続けるでしょう。
創業者・横河民輔の「日本初」をめざす執念(1915年)
横河電機の創業者・**横河民輔(たみすけ)**は、当時まだ日本にほとんどなかった「電気計測器」の国産化を目指しました。
当時の計測器はすべて欧米製。非常に高価で、輸入に頼るしかありませんでした。
でも彼は言いました:
「日本の技術者が、自分の手で“電気を測る道具”を作れないでどうする!」
これが、1915年の創業につながります。
ただし──最初の工場はたった3人の職人と手作業。ネジを1本1本削り、コイルも手巻き。計器の目盛りは全部手書き!
「製品が狂うと、それは“人の信用が狂うこと”だ」として、たとえ納期が遅れても絶対に妥協しませんでした。
この“品質第一主義”は、今も横河電機の企業文化として息づいています。

戦時中の地下工場と、技術を守った男たち(1940年代)
太平洋戦争のさなか、日本中が空襲の危機にさらされていたころ、横河電機は貴重な技術と資料を守るために、「地下の防空壕のような場所」に研究開発設備を移設しました。
ある技術者は、こう語っています:
「毎日、空襲警報が鳴るたびに図面と部品を抱えて地中に潜った。
それでも“測定器の精度は落とすな”という民輔さんの言葉が頭から離れなかった」
戦後、その地下でこっそり守られていた技術が、戦後復興のスタートダッシュを支える原動力になったのです。

「誤差±0.01%」にかけたエンジニアの執念
戦後のある時期、海外輸出向けの測定器で、海外メーカーとの仕様競争が発生。
「誤差±0.1%」が当たり前だった中、横河の技術者は言いました。
「ウチなら±0.01%出せます。保証します」
周囲は「無茶だ!」と反対。でも彼らは、設計から部品選定、組立てに至るまで1000回以上のテストを実施し、ついに成功。海外の大手メーカーを驚かせ、世界市場への突破口を開いたのです。
このときの測定器は、今でも「伝説の電流計」として社内で語り継がれています。

“AI”の前に“人の知恵”で異常を予測した話(1980年代)
今でこそAIやIoTが盛んですが、1980年代の横河ではすでに“予兆保全”の考え方がありました。
ある製紙工場で、機器のトラブルが頻発していたとき, 横河の技術者が、数ヶ月にわたって温度・振動・圧力データを手書きで記録してパターンを探りました。
すると、「ある振動パターンが3日前に必ず現れる」ことを発見。
その予兆をベースにプログラムを作り、異常発生前に警告を出せるように!
現場では「この人たち、機械と会話してるのか!?」と驚かれたそうです。

ある若手が1行のコードで制御を変えた伝説(2000年代)
制御システム「CENTUM」のアップグレード時。ある若手エンジニアがテスト中、コードの中に1文字だけおかしい箇所を見つけました。
誰も気づかなかったその1文字(配列の初期化ミス)を直したところ…
「プラントの応答速度が0.2秒改善。年1000万円分のエネルギーが節約された」
という話があります。
これがきっかけで、彼は社内表彰を受け、「1文字で世界が変わる」という言葉が社内スローガンの一つになったとか。

「創業者の理念」が100年経っても残る会社
創業者・横河民輔は生涯にわたって、こう語っていました。
「測ることは、真実を知ること。真実が分かれば、正しい判断ができる」
この言葉は、横河電機の企業理念「Co-innovating tomorrow(共に未来を創る)」にもつながっています。
制御も医療も環境も、すべて“正しく測ること”から始まる。
その哲学が、100年以上変わらずに続いている──それこそが、横河電機の最大の強みかもしれません。
サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、横河電機製の製品・部品は約6,493種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している会社は見当たりませんでした。
上記のサプライチェーン情報は2025年04月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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