XYCOM
1. XYCOM社概要
XYCOM社は1970年代にアメリカ・ミシガン州にて設立され、産業用制御機器とコンピュータシステムの開発に特化してきた企業です。同社は、早期からPCベースの制御システムやオープンアーキテクチャの導入に積極的であり、産業オートメーション分野におけるイノベーションを牽引してきました。特に1990年代から2000年代初頭にかけて、産業用コンピュータ(IPC:Industrial PC)のリーディングカンパニーとして世界的にその名を知られるようになります。
XYCOMは独立系企業としての長い歴史を持ちますが、後にPro-face America(プロフェイス・アメリカ)およびSchneider Electric(シュナイダー・エレクトリック)のグループに統合され、よりグローバルな展開と技術統合を進めました。

2. 主な製品群
XYCOMの主な製品は、以下のような産業用途向けに設計された堅牢なコンピュータ機器です。
・産業用パネルPC
XYCOMのパネルPCは、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)として用いられ、製造現場やプラントなどで機器制御や監視に使われます。防塵・防水設計、高温対応、耐衝撃性を備え、過酷な環境下でも安定した動作を保証します。
・ラックマウント型PC
工場の制御室やサーバールームで使用されるラックマウント型コンピュータは、拡張性が高く、各種I/Oカードやネットワーク機能の搭載が可能です。
・I/Oボードおよび制御カード
産業用途に特化したI/Oボードやデータ収集用のカードもXYCOMの強みの一つであり、特定のアナログ・デジタル信号に対応したモデルが提供されていました。
・HMIソフトウェア(Pro-faceとの統合後)
XYCOMはハードウェアの製造に加え、後期にはHMI(タッチパネル)関連のソフトウェア提供にも力を入れており、Pro-faceとの技術的な融合を進めました。

3. 特徴と強み
XYCOMの製品が業界で高い評価を得てきた背景には、以下のような特徴があります。
- 堅牢性と信頼性:軍事仕様に匹敵する耐久性を持ち、過酷な工場環境や屋外の制御システムに適しています。
- 長期供給体制:産業分野では長期間同一スペックの部品供給が求められますが、XYCOMはこれに応える体制を整えていました。
- 高いカスタマイズ性:顧客のニーズに応じてI/O構成や筐体設計を柔軟に対応。
- PCベース制御の先駆者:従来のPLCベース制御からPCベース制御への移行を推進し、オープンアーキテクチャの導入を実現しました。

4. 沿革と企業統合
XYCOMは2000年代初頭に**Xycom Automation Inc.**としてのブランドを維持しながら、Pro-face America(プロフェイス・アメリカ)に吸収されました。このPro-face社自体も、日本のデジタル社(Digital Electronics Corporation)にルーツを持つ企業であり、後にシュナイダー・エレクトリックに買収されます。
そのため現在、XYCOMブランドとしての独立性は見られませんが、Pro-faceやシュナイダーの製品群の中にXYCOMの技術や設計思想が多く取り込まれています。たとえばPro-faceの一部産業用コンピュータ製品は、XYCOMの技術的流れを継承しています。

5. 業界への影響
XYCOMは、現在の産業用PC市場やエッジコンピューティングの概念の発展において、初期段階から重要な役割を果たしてきた企業の一つです。特に以下の点で業界に貢献してきました:
- オープン化の推進:プロプライエタリな制御システムから、PCを基盤とした制御に移行する流れを後押し。
- HMIの進化:グラフィカルなユーザーインターフェースを持つHMIの開発に貢献。
- システム統合の簡略化:制御機器と情報機器の融合を進め、全体のシステム設計をよりシンプルかつフレキシブルに。

6. 現在の位置づけ
2020年代以降、XYCOMという名前は前面には出てこなくなりましたが、その製品群はPro-faceおよびSchneider Electricの産業用HMIおよびIPCラインナップの中に組み込まれています。また、XYCOM製品を導入していた多くの企業では、今もなおその機器が稼働しており、メンテナンスやリプレースの際に互換性のあるソリューションが求められるケースも多く見られます。

結論
XYCOM社は、産業用PCやHMIの分野で先進的な役割を果たしてきたパイオニア企業であり、特に製造業やインフラ業界での自動化に多大な貢献をしてきました。その技術や思想は、現在もPro-faceやSchneider Electricの製品群を通じて生き続けています。XYCOMの名は薄れても、その精神は、現代のスマートファクトリーやIIoT(産業用IoT)を支える重要な基盤となっています。

■「XYCOMが作った“ビールマシン”」
1980年代後半、XYCOM社のエンジニアたちは、自社の産業用コンピュータがどれほど柔軟で応用範囲が広いかを示すために、社内イベントでちょっとした“ジョークマシン”を開発しました。それが「ビール自動サーバーマシン」です。
この装置は、XYCOMのPCベースのコントローラとI/Oカードを使って作られており、ジョッキをセットすると、センサーがそれを検知し、自動で冷えたビールを最適な角度と速度で注ぐというもの。注ぎ終わると、音声メッセージで「乾杯!」と喋るという遊び心も搭載されていたそうです。
もちろんこれは正式な製品ではありませんでしたが、社外の展示会でデモとして披露された際、多くの来場者の関心を集め、「これを売ってくれ」という声も多数あったとか。冗談交じりではありますが、XYCOMの機器がどれだけ応用力が高いかを楽しく証明した出来事として、社内でも語り継がれているそうです。

■ XYCOMが製鉄所の「心臓部」に使われた驚きの導入事例
1990年代初頭、アメリカ中西部にある大手の**製鉄会社(社名非公開)**では、長年使用していた中央制御システムの老朽化が問題になっていました。そのシステムは高温、粉塵、振動など過酷な条件下で稼働する必要があり、一般的なPCやPLCでは安定稼働が難しいとされていました。
当時、その企業が目を付けたのがXYCOMの産業用ラックマウントPCでした。XYCOMは、軍用にも使われるレベルの耐久性と長期安定稼働を誇るシステムを提供しており、特にその中でも「XYCOM XVMEシリーズ」というVMEバスベースのモジュラーPCが採用されました。
この導入が驚きだったのは以下の点です:
- 旧来のPLCを廃止し、完全にPCベースで制御という当時としてはかなり大胆な決断だった
- 24時間連続稼働・365日停止不可の環境で10年以上トラブルなしで稼働した
- ダウンタイムが1時間=数千万円規模の損失に直結する現場で、XYCOMがその「心臓部」を担ったという事実
XYCOMの担当技術者たちは、現場でのトラブル発生時にも数分で原因特定・復旧できるよう、独自のリモート診断ユーティリティまで開発。結果的に、この導入はPCベース制御でも信頼性を確保できるという大きな証明となり、以降、他の重工業分野でもXYCOM採用が進むきっかけとなりました。
■ XYCOMが「原子炉の監視装置」に使われた衝撃の事例
1990年代後半、アメリカ東部にある商用原子力発電所(施設名非公開)では、老朽化した制御・監視システムの刷新プロジェクトが始まりました。これまで使用していた専用機器は、保守部品の調達も困難になりつつあり、より柔軟性と保守性に優れたオープンシステムが求められていたのです。
そんな中で選ばれたのが、なんとXYCOM製の産業用パネルPCとVMEバスコンピュータ。導入場所は、原子炉の運転状態、冷却水の流量、圧力、放射線レベルなどをリアルタイムで監視する、いわば**「中枢神経」にあたるシステム**でした。
なぜXYCOMだったのか?
- 徹底した耐ノイズ性・耐放射線設計(一部はシールドケース内に収納)
- ミリ秒単位のデータ取得・ログ化が可能な高速I/O処理能力
- Windows NTベースでありながら、リアルタイムOSとの連携にも対応できた柔軟な構成
この事例の面白いところは、XYCOMの技術者が原子力規制委員会(NRC)に出向き、自社のPCが「命を預けるシステム」に値する信頼性を持っているかどうかをプレゼンし、承認を勝ち取ったという点です。製造業のプレゼンではなく、国家安全保障レベルの技術審査に通ったというのは、まさに異例の出来事でした。
導入後、この監視システムは10年以上トラブルなしで稼働。しかも、XYCOMのソフトウェアロギング機能が後に行われたトラブル調査に大きく役立ったこともあり、「今のところ、XYCOMを超える選択肢はない」と発電所側から絶賛されたといわれています。
■ XYCOMが「NASAのロケット試験施設」で使われた実話
2000年代初頭、アメリカ・アラバマ州にあるNASAマーシャル宇宙飛行センター(Marshall Space Flight Center)では、新型のロケットエンジン(スペースシャトルや後継機の推進システム)に関する燃焼試験・振動試験・冷却試験が行われていました。
この試験施設は、ものすごい数のセンサーデータ(温度、圧力、振動、流量など)をミリ秒単位で収集・記録し、それをリアルタイムでモニタリングする必要がありました。一般的なコンシューマ向けPCでは性能も信頼性も足りず、しかも現場の条件は極寒・高湿・強い電磁ノイズが飛び交う過酷な環境。
そこでNASAが導入したのが、XYCOM製のVMEバスベースのモジュラーPCおよびI/Oボードでした。
なぜNASAがXYCOMを選んだのか?
- 極めて高精度なA/D変換が可能なXYCOMのI/Oボード
- 長期連続運転に耐えうる熱設計と放熱性能
- ミリ秒単位のデータロギングとアラーム機能の柔軟性
- 独自ドライバを組み込める柔軟なアーキテクチャ
NASAの技術者は、試験中に発生する突発的なデータ異常やセンサー断線時にもXYCOMのシステムが自動的にフェイルセーフ処理を実行し、全体の停止を防いだことを高く評価しました。しかも、XYCOMは自社のエンジニアを現地に派遣し、NASAの独自仕様に合わせた特注BIOSとI/Oファームウェアまで用意して対応。
最終的には、**「XYCOMがいなければ、あのロケット試験はスケジュール通り完了していなかった」**という言葉まで現場で語られたそうです。

小ネタ:XYCOMロゴが写り込んだNASAの記録映像
この話の“裏話”的なオチとして、NASAが社内向けに公開していたロケット試験映像の中に、XYCOMのロゴが入った機材ラックが映り込んでいたことがマニアの間で話題になったことがあります。ごく一部のオタクたちの間で「XYCOM、宇宙開発に関与してるじゃん!」と密かに盛り上がったとか(笑)
サプライチェーン情報
弊社の流通中古市場調査で、
XYCOM製の製品・部品は約650種類確認されています。
また互換・同等の製品・部品を供給している主な会社は以下のとおりです。
Proface 約140種類
Schneider 約180種類
上記のサプライチェーン情報は2024年 04月に調査した流通在庫データをベースにしていますので日時の経過によって変動いたします。
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